zekaoh's blog

将棋、雑記など

「或るアホウの一生」第一集の感想

「或るアホウの一生」第一集の感想


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ちょっとクセのある絵柄と試し読み第一話のメイク顔などで、奇を衒っただけの漫画なのかと思い読むのを敬遠していたんですが、読んでみると真面目に将棋の世界を取り上げていてすごく面白かった。

漫画の内容は三段リーグを舞台に4人の奨励会員の悲喜こもごものドラマがコメディタッチで描かれる、といったもの。将棋界の設定はリアリティがあり、奨励会の様子なども詳しく描かれている。奨励会のシビアさ、シリアスさが根底にあるものの、主人公がメイクをして将棋を指すなど今までの将棋漫画では無かった独特のコメディシーンが面白い。

漫画ではメインになるキャラクターの奨励会三段が4人登場。彼らを中心にドラマが進む。主人公はその中の一人、17歳の高以良 瞬(たかいら しゅん)。
彼は性格はひねくれているけど子供っぽいところもあり、思いつめるととんでもないこともやってしまうキャラクター。親がいない設定のようだけど、雰囲気に暗さが無いのがユニーク。
子供の頃から将棋に打ち込み順調に昇段したけれど、三段リーグの壁にぶち当たり、このままではプロになれないのではないかと初めて将棋に恐怖を感じ、現在はもがき苦しんでいる真っ最中。あまりにも思い余って、顔にメイク、耳にピアスをして対局に臨むという暴挙に出るのが第一話。

このメイクをして自分を変えるという発想はちょっと変わってるな、不思議だなと思ったら、作者は女性と知り納得。これは男性作家では思い浮かばないアイデアだろうなあ。

主人公の彼を含め登場人物は全体的にクセが強め。そのせいか第一話は各キャラクターがどういう人物かいまいち掴めず、最初はちょっと感情移入しづらく読みにくかった。しかし2話目あたりでキャラクターがだんだん掴めてくると俄然面白くなってくる。自分のように試し読みで苦手と思った方もとりあえず一巻読んでみることをお勧めします。

絵は個性的で良いのだが、若干キャラクターの特徴づけが希薄なところがあり、特に主人公と同年齢の夏目くんが出てくるシーンではこの人は誰?と思う場面もあった。また主人公の師匠が米長邦雄永世棋聖そっくりで、最初悪人にしか見えなかったのは内緒である・・・

対局シーンは将棋を知らない人でも読めるように配慮されている。盤面はあまり出てこないが棋譜はきっちりと作られている模様。

この第一集では3話のあるシーンが一番印象に残った。主人公が信頼を寄せる先輩との対局である事件が勃発し、それに対する主人公の対応が痛快。このシーンのコマは漫画中最大のインパクトで、主人公のアホメイクがちゃんとシーンの効果を上げる伏線になっているのも面白い。ここはぜひ見ていただきたいところ。


基本がコメディということもあり、シリアスになりそうなシーンでもツッコミが入ったり、適度にドライな感覚で読める漫画という印象。
ストーリーはまだ序盤なのでどうなるのかわからないけど、とりあえずキャラクターの掛け合いとか主人公たちの心の動きとかが面白いので、将棋のわかる方もわからない方も楽しめると思います。一度読んでみてはいかがでしょうか、とおすすめして感想は終わり。

追記
作者はBL作家でもあるとのことで、そういえばこの漫画には女の子が全く出てこないということに気がついた。BL作家だからなのか、物語に女の子が出る必然性がないからなのかはわからないけど、こういうところもちょっと変わってる漫画ですね。