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zekaoh's blog

将棋、雑記など

「しおんの王」(漫画版)の感想

しおんの王」(漫画版)の感想

漫画版は全8巻。電子書籍版を購入。原作者のかとりまさるは元女流棋士林葉直子さんとのこと。

将棋漫画としてはかなり凝った設定で、女流棋士の世界を描くとともに、主人公である紫音(しおん)の両親殺害事件の謎も描くミステリーの要素もある。
読む前はこのミステリーの部分が主なのかなと思っていたが、実際はかなりしっかりと対局シーンが盛り込まれ、あくまでも将棋のストーリーが中心だった。
各キャラクターは始めは裏表のある曲者ばかりかなと思っていたら、ほとんどのキャラクターは将棋に対しては非常に真摯で、盤上での戦いは非常に熱いものが見られた。
対局シーンはかなり濃厚。盤面全体はあまり映らず、セリフと部分的な局面、対局者の心理描写と観戦者の解説で盤上の激しい攻防が表現されている。さすがに対局の流れやポイントになる盤面等、女流棋士だっただけはあり的確で説得力がある。作画も迫力あり。

漫画版では話と話の間に原作者かとりまさるによる対局の解説ページがあり、図面も使ってポイントの手の意味などがわかるようになっている。これは将棋ファンにはありがたいサービス。ただ若干誤記や不十分な解説もあったのでそこは残念。


ストーリーは基本的には主人公紫音にまつわる事件の謎で引っ張る形だが、ライバルとの戦いや、王子様との出会いなど、彼らとの関わりを通した紫音の成長物語としても読める。
内容としては様々なストーリーが盛りだくさんで、読み始めたら止まらない感じなのだが、若干中終盤のトーナメントのあたりは対局シーンが多く将棋描写に偏りすぎに思え、思ったほど世界が広くないような印象も持った。
将棋漫画なので将棋描写が多くて当たり前なのだが、少々将棋愛がストレート過ぎる世界かなとも思った。ただ嫌味がない世界も悪くはないので、ここは個人的な好みの問題か。

この作品の最大の問題はネタバレ部分なのでこの感想では触れない。ただあのアイデアが浮かぶ人はただ者ではないだろうなあ。自分としては驚きもし、また凄いアイデアだなと思ったが、同時にこれはちょっとどうなのとも思った。原作のままでも良いのだが、もっと違った展開もあり得たようにも思える。ラストも紫音とあの人との関係性の話にして欲しかったかな。




もっとドロドロ人間関係が描かれたダークな作品だと思っていたので、読んでみてすごくまっとうでさわやかな将棋漫画だったので意外な作品だった。ダークだと思い込んでいたのは林葉直子さんのイメージから・・・林葉さんすいません。
系統としては少女漫画に入るのだろうか、自分はそちら側の教養がないのでわからないが、恋愛の代わりに将棋愛がテーマになっているのかなと思った。
キャラクターとしては紫音が無垢で良い子で可愛らしすぎるのだが、これも少女漫画的なキャラクターなのかな。紫音の年齢が低いので、あまりダークなストーリーにはならず、ほがらかで楽しい部分もあるストーリーになっていると思う。
将棋ではなく恋愛ものとしてこのストーリーを見ると、ラストのあの人は紫音に告白して振られた展開になるわけで、これがもう少し紫音の年齢が高く、恋愛ものの要素を大きくすると、あのラストの結末も変わったものになるのかもしれない。将棋とは関係なくなるが、歪んだ愛を強調した話でも面白くなりそうではある。

あんまり漫画に詳しくない自分が言うのも何だが、将棋漫画としては一級品だと思う。若干長いような気もするが、サスペンスとしても面白く読める。問題は将棋の分からない人が読んでどう思うかだが、意外と対局描写が多いので、雰囲気だけで読むにしても大変かもしれないなあ。

まあとにかく面白かったので、原作者の林葉直子さんにはまたこういう話を書いて欲しいところ。将棋がわかっていてストーリーも作れる貴重な存在なのだから、もっと活躍して欲しいと思った。